
シンガポールおすすめ建物|Part 2
2013年02月 | デジタルリマスター版
ビシャンコミュニティ図書館
今を時めくLOOK Architectsの設計で2006年にOPENした公共図書館です。
カラーガラスのBOXが幾つも外壁カーテンウォールから飛び出しているようなファサードは、本棚から飛び出す本のイメージとの事で、美しい建物です。
やはり片持ちとなる突出BOX部分の床厚が小さく、日本との構造的な違いを感じます。
ザ・ピナクル・アット・ダックストン
全国民の8割が住んでいるといわれるHDB(日本で言う公団)が建設した高層コンドミニアム。
複数のビルで構成され、最上部展望フロアーには橋がかけられるようにつながっています。
サッシ縦のラインが直線的では無いことで形作られるファサードが特徴的で、壮大な印象を与えます。
設計はARC studio architecture + urbanismです。
リパブリック・ポリテクニック
地下1階 地上11階、延床面積210,000m2、 DP Architects Pte Ltdの設計協力で槇文彦の設計による大学施設です。
教室棟・教務棟を包絡する中間領域としての人工地盤には水盤があり、緑を取り入れた景観はシンガポールらしさを感じさせます。
曲線や非垂直線の多いこの国の建築の中で、繊細で直線的構成は槇氏らしく、どこか安心感を感じさせる施設でした。
内部空間のガラスウォールでは25mm厚のスチールプレート+構造シールでとても細く、美しい納まりです。ディテールを撮りたくなる数少ない建物でした。
レッド・ドット・トラフィック
1階にレッド・ドット・デザイン美術館やショップ・飲食店、2階以上はデザイン事務所として利用されている、赤い外壁が特徴の、設計者・ 施工者とも不明の建築です。
時間があれば美術館にも行ってみたかったと思います。
サザンリッジス
シンガポール南部の緑豊かな丘陵地帯に建設された、東西に連なる3つの国立公園を結ぶ2つの歩道橋と全長9キロの遊歩道です。
写真上段はアレクサンドラアーチ、下段はヘンダーソンウェーブで中空遊歩道(フォレストウォーク)と併せて遊歩道を構成しています。設計はLOOK Architects、2008年の竣工です。

ラサール・カレッジ・オブ・アーツ
RSP アーキテクツ プランナーズ&エンジニアーズ(シンガポール)の設計によるユニークな美術学校。
2010年にOPENしたこの新校舎はガラス張りで、いかにもアートスクール風な斬新なデザイン。
2列×3棟、6棟のガラス建屋の中央広場上部にはテント屋根がかかっています。
台風の無いシンガポールならではの建築です。
ファサードガラスの三角形部分にはガラスが入っていません。換気のためなのか?
テント屋根のため雨は入らず、常夏のため暖房も不要だからでしょうか?
ナンヤン工科大学(南洋理工大学)
1990年代からシンガポールで数多くの巨大施設を手掛けた丹下健三が1986年に設計した大学施設です。
地上6階、地下5階で、丹下氏が設計したのは開校時の初期のみとのことです。(色々と面白い形をした校舎も有)
敷地面積:240,000.00m²、建築面積:44,050.00m²、延床面積: 136,000.00m²、高さ:35.00m。
ナンヤン工科大学美術部
CPGコンサルタンツが設計して2007年に竣工したNanyang Technological University, School of Art。
緑に覆われた谷間に計画され、『建物ではない構築物』として、自然の地形を生かした造形は美しいの一言です。
屋上芝生広場は思いのほか水分が多く柔らかですが、自由に歩くことが出来ます。
延床面積 19,000m²、総工費 3800 万シンガポールドル。
ドリードン・コンドミニアム
設計はイラク人建築家Zaha Hadid<ザハ・ハディッド>。
居住区エリアに計画的に配置された7棟のタワーはこれも垂直面が曲面となった住宅建物で、まだ工事中でした。高さ約150m、地上階 延床約220,000m²の巨大コンドミニアムです。

インターレイス集合住宅
こちらも 2013.01月末時点では工事中の、シンガポール最大級の集合住宅です。
一般的な垂直にそびえ立つマンションと異なり、直方体が複雑に交錯して繋がりあうような空間構成です。
地震の無い国ならではの構造計画です。
設計はオランダのOMA。

オーチャード・セントラル
シンガポールのDP Architectsの設計により2009年にOPENした、12階建てで細長い姿が印象的なオーチャード・セントラル。
ガラスを使った外観もかなり個性的で、12階までの吹き抜けの壁面を利用して作られた、ウォールクライミングの施設が特徴です。


アイオン・オーチャード
2009年にOPENした最高級コンドミニアム 『ザ・オーチャード・レジデンス』は、56階建て175室。
商業施設『アイオン・オーチャード』は地上4階・地下4階、延べ床面積は64万平方フィート(約5万 9,000m²)でうねるようなエントランスファサードが特徴的です。
総工費は約20億シンガポールドル。
香港のBenoy社による設計で五洋建設が施工しています。
オーチャードセントラルのすぐ横に見えた円錐のガラス構築物は、黒川紀章の設計で1993年竣工のレイ ン・クロフォード・プレイスでした。


シンガポールの街並みと景観
シンガポールは海辺に近代的な高層ビルが立ち並ぶイメージがありましたが、殆ど海の潮の香りがしません。
それは今回見学したマリーナ・バラージ・ビジターセンターでも見られた、海水を淡水化して貯水池として活用しているためで、入り江に見えるマーライオンは淡水だったのです。
地震が無く、台風も無い、赤道に近い常夏の国、それだけでも日本との違いは大きく、必然的に建築計画も日本と異なる部分が多く見られます。
ほんの少しシンガポールの建物に触れただけではありますが、感じたことを以下に列記します。
■高温多湿ゆえの風通し確保なのか、下3~5層がゲート状に抜けている建物が多い。
■簡易的なテント屋根の建物が多く、その下でガラスの入っていない開口部が多くみられる。
■建物入口扉の外側には段差も排水用グレーチングも見られない。
■常夏で湿度も高く落葉時期が集中する事が無いため、常に緑を保てることから壁面緑化・屋根緑化が多くみられる。
シンガポールはたばこやごみのポイ捨てに厳しく、街中には殆どゴミ殻は落ちていません。
また常夏多湿の中、緑溢れる環境であるにも関わらず、雑草が殆ど見られない事も管理の徹底を感じさせます。
但しそれは東京も同様であり、私達日本人にとってはそれ程驚くには値しません。
そんな中、個人的に感心したことは以下の3点でした。
1 街中に自転車が殆ど走っていない。
恐らく地下鉄やバス交通網が良く整備されている事とタクシーが安い事が理由だと思います。
2 欧州同様、電柱・電線が無い事で景観が美しく保たれている。
やはりこれは日本でも取り入れるべき重要課題だと思います。
3 常夏にもかかわらず蚊がいない。
赤道にほど近い気候ゆえ、マラリアなどの伝染病の発生は、金融・観光・貿易立国であるシンガポールには致命的となるため、国を挙げて対処しているようです。(虫自体、ほとんど見かけませんでした)


文章 | 飯島 知二